昨年の4月9日よりお勤めしてまいりました親鸞聖人750回大遠忌法要は、
本日ご満座をお迎えいたしました。各地から多くの方々にご参拝いただき、65
日間115座にわたるご法要を厳粛にお勤めすることができましたのは、仏祖
のご加護と宗祖のご遺徳のおかげであり、御同朋御同行の方々の報恩謝徳のご
懇念のたまものと、まことに有り難く存じます。
顧みますと、ご法要の始まる直前の3月11日、東日本大震災がおこりまし
た。その後も各地で地震、豪雨などが続き、大変な一年となりました。被災さ
れた方々に心よりお見舞い申し上げます。法要参拝を楽しみに待ちながら、災
害やさまざまの理由で参拝できなくなった方々のことを、忘れることができま
せん。
地球の歴史を考えます時、自然現象としての地震や豪雨は、数限りなくあっ
たことでしょう。しかし、それが深刻な災害となるのは、人間のあり方、社会
のあり方によります。特に、今回の原子力発電所の事故は、自然の調和を破り、
後の世代に大きな犠牲や負担を強いることになりました。これは肥大した人間
の欲望のもたらしたところであります。
聖人は、凡夫には清らかな心も真実の心も存在しないとお示しになりました。
それは、阿弥陀如来の光に照らされて明らかになる私の姿です。凡夫の身でな
すことは不十分不完全であると自覚しつつ、それでも「世の中安穏なれ、仏法
ひろまれ」と、精一杯努力させていただきましょう。阿弥陀如来はいつでも、
どこでも、照らし、よびつづけ、包んでいてくださいます。
本願念仏のご法義は、時代が変わり、社会が変わっても、変わることはあり
ません。しかし、その法義が活きてはたらく場である現実の社会は、地域によ
って異なり、時とともに変わります。ご法義を伝え、広めるための宗門の組織
も、社会の変化に応じて変わる必要があります。歴史を顧みて、受け継ぐべき
伝統を確かめ、創造的な活動を育てていかなければなりません。本年4月1日
から、宗門の体制が改められますのも、時代に即応する営みの一つであると言
えましょう。新しい体制のもとで、一人ひとりが抱える課題を大切にし、お念
仏を喜び心豊かに生きることのできる社会を目指しましょう。このたびの大遠
忌法要が、新たな歩みを進める機縁となりますように念願いたします。
2012(平成24)年1月16日
龍谷門主 釋 即 如
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