御消息等

■伝灯奉告法要についての消息
                 《2015(平成27)年1月16日御影堂にて》

   
    
   去る平成26年6月6日、前門主の跡を承けて法統を継承し、本願寺住職なら
  びに浄土真宗本願寺派門主として務めてまいりました。ここに法統継承を仏祖の
  御前に奉告いたしますとともに、あわせて本願念仏のご法義の隆盛と宗門の充実
  発展とを期して、平成28年および29年に、伝灯奉告法要をお勤めすることに
  なりました。
   阿弥陀如来のご本願は、あらゆる存在を分け隔てなくそのまま救おうとはたら
  きかけていてくださいます。迷いと苦悩をかかえる私たちは、阿弥陀如来のお慈
  悲ひとすじにこの身を任せ、真実のさとりの世界であるお浄土に生まれていくべ
  き身にならせていただきます。宗祖親鸞聖人が「そらごとたわごと」とお示しく
  ださった私たち自身を含む迷いの世界は、何一つとしてたよりになるものはあり
  ませんが、ご本願のはたらきの中に生きる私たちは、確かな依りどころを持つこ
  とができます。
   科学技術の発達による便利で豊かな生活の追求や欲望の肥大化はとどまること
  を知りませんが、人々は、そのような豊かさのみを追求することの虚しさに気づ
  きはじめたのではないでしょうか。しかも、核家族化・人口の流動化などによっ
  て社会構造は大きく変化し、人間関係は希薄となり新たな悩みや不安を生み出し
  ています。さらに世界に眼を移せば、武力紛争、経済格差、気候変動、核物質の
  拡散など、人類の生存に関わる課題が露呈しています。これらの傾向は今後一層
  強くなっていくことと思います。
   私たちは、凡愚のまま摂め取って捨てないとはたらき続けていてくださる阿弥
  陀如来のお慈悲を聞信させていただき、その有り難さ尊さを一人でも多くの方に
  伝えることが大切です。それとともに仏智に教え導かれて生きる念仏者として、
  山積する現代社会の多くの課題に積極的に取り組んでいく必要があります。まさ
  にこのような営みの先にこそ、「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実
  現に貢献する」道が拓かれていくのでありましょう。
   このたびのご法要が、親鸞聖人によって明らかにされた阿弥陀如来の救いのは
  たらきに依りながら、時代の変化に対応する宗門の新たな第一歩として意義を持
  つものでありたいと思います。宗門では、親鸞聖人御誕生850年・立教開宗
  800年に向けて新たな長期計画が策定されます。皆様の積極的なご協力とご参
  画を心から念願いたします。
                    平成27年(2015年) 1月16日
                    龍谷門主  釋  専  如