御消息等

■御正忌報恩講でのご門主法話(ご親教)〔2018(平成30)年1月15日御影堂にて〕

  「念仏者の生き方」共々に考える
 
         
 ◎SDGs社会の問題にできることから取り組みを
   本年もようこそ御正忌報恩講にご参拝くださいました。全国から親鸞聖人をお慕い
  する皆さまがご参拝くださり、ご一緒におつとめをし、お念仏申させていただく尊い
  ご縁であります。このご縁にあたり、あらためて親鸞聖人がお説きになった浄土真宗
  のみ教えを味わわせていただきましょう。
   親鸞聖人は、比叡山で20年間、さとりを求めて修行をされましたが、我執、我欲
  の心である煩悩が無くなることはありませんでした。明日おつとめいたします『嘆徳
  文』には、親鸞聖人のおこころを「定水を凝らすといへども識浪しきりに動き、心月
  を観ずといへども妄雲なほ覆ふ」(『註釈版聖典』1077頁)と記されています。
  平らな水面を見ると波が立ち、月を見ると雲に覆われてしまうということです。
   親鸞聖人だけでなく、仏教を説かれたお釈迦さまの時代から、私たち人間の姿は変
  わりません。それは、この世界の真実をありのままに受け止めることができず、自分
  の思いやとらわれの中で悲しみ苦しむ姿であります。親鸞聖人は、そのような私たち
  を救おうと阿弥陀さまがはたらきかけてくださっていると明らかにされました。阿弥
  陀さまのおはたらきの中で、私たちは真実を聞き、真実に気付くことができます。そ
  のことによって、自分自身のありのままの姿、自己中心的な姿を知ることができます。
   さて、科学技術が発達した現代社会ですが、それゆえにさまざまな問題も起こって
  います。今のままでは人間が存在することのできない地球になってしまうという強い
  危機感が世界で共有されています。そのことを背景として、2015年に国連で全会
  一致で採択された「SDGs 持続可能な開発目標」は、地球環境と人々の暮らしを
  持続的なものとするため、深刻化する地球規模の課題にともに取り組み、人類の未来
  を切り開いていくことを目指したものです。「誰一人取り残さない―No one 
  will be left behind(ノー ワン ウィル ビー レフト ビ
  ハインド)」を理念として、そこで取り上げられた課題には、2030年までに達成
  する「貧困」「教育」「ジェンダー」「不平等」「平和」など世界を変革するための
  17の目標が掲げられています。そして、日本においても未達成とされている目標が
  多くあります。
   先ほども述べましたように、私たち念仏者は、阿弥陀さまのおはたらきの中で、自
  分自身のありのままの姿、自己中心的な姿を知ることができます。そして、阿弥陀さ
  まの救いのおこころを知らされた私であるからこそ、他の方の悲しみや苦しみに無関
  心ではいられません。さまざまな社会の問題に関心を向け、私にできることから解決
  への取り組みを始めていきましょう。
   今年の報恩講にあたり、浄土真宗のみ教えを依りどころとする念仏者の生き方を共
  々に考え、今日からの日々を過ごしてまいりましょう。
   本日はようこそご参拝くださいました。