御消息等

■親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年についての消息
                 《2019(平成31)年1月9日御影堂にて》

   
    
   去る平成26年6月6日、前門主の跡を承けて法統を継承し、本願寺住職なら
   来る2023年には、宗祖親鸞聖人のご誕生850年、また、その翌年には立
  教開宗800年にあたる記念すべき年をお迎えするにあたり、2023年に慶讃
  法要をお勤めいたします。
   親鸞聖人は承安3年・1173年にご誕生となり、御年9歳で出家得度され、
  比叡山で修行を重ねられましたが、29歳の折、山を下りて法然聖人の御弟子と
  なられ、阿弥陀如来の本願念仏の世界に入られました。その後、専修念仏停止に
  よって越後にご流罪になられ、赦免の後は関東に赴かれて他力念仏のみ教えを人
  々に伝えられるとともに、『教行信証』の執筆にとりかかられました。他力念仏
  のみ教えがまとめられた本書は、浄土真宗の根本聖典という意味でご本典と呼ば
  れています。そして、そのご本典の記述によって、その成立を親鸞聖人52歳の
  時、すなわち元仁元年・1224年とみて、この年を立教開宗の年と定めていま
  す。
   仏教は今から約2500年前、釈尊が縁起や諸行無常・諸法無我というこの世
  界のありのままの真実をさとられたことに始まります。翻って私たちは、この執
  われのないおさとりの真実に気づくことができず、常に自分中心の心で物事を見
  て、悩み、悲しみ、あるいは他人と争ったりしています。釈尊は、このような私
  たちをそのままに救い、おさとりの真実へ導こうと願われたのが阿弥陀如来であ
  ることを教えてくださいました。そして、親鸞聖人は、この阿弥陀如来の願いが、
  南無阿弥陀仏のお念仏となってはたらき続けてくださっていることを明らかにさ
  れたのです。
   ありのままの真実に基づく阿弥陀如来のお慈悲でありますから、いのちあるも
  のすべてに平等にそそがれ、自己中心的な考え方しかできない煩悩具足の私たち
  も決して見捨てられることはありません。その広大なお慈悲を思うとき、親鸞聖
  人が「恥づべし傷むべし」とおっしゃったように、阿弥陀如来のお心とあまりに
  もかけ離れた私たちの生活を深く慚愧せざるをえません。しかし、この慚愧の思
  いは、阿弥陀如来の悲しみを少しでも軽くすることができればという方向に私た
  ちを動かすでしょう。
   それは、阿弥陀如来の願いを一人でも多くの人に伝え、他人の喜び悲しみを自
  らの喜び悲しみとするような如来のお心にかなう生き方であり、また、世の安穏、
  仏法弘通を願われた親鸞聖人のお心に沿う生活です。み教えに生かされ、いよい
  よお念仏を喜び、すべてのいのちあるものが、お互いに心を通い合わせて生きて
  いけるような社会の実現に向け、宗門総合振興計画の取り組みを進めながら、来
  るべき親鸞聖人ご誕生850年ならびに立教開宗800年の慶讃法要をともにお
  迎えいたしましょう。

                    平成31年(2019年) 1月9日
                    龍谷門主  釋  専  如