御消息等

■退任に際しての消息  龍谷門主 釋 即 如
                 《2014(平成26)年月5日御影堂にて》

   
    
   本日、平成26年6月5日をもって、私は本願寺住職ならびに浄土真宗本願寺派門主を
  退任し、後を本願寺嗣法・新門に託すことにいたしました。
   昭和52年4月1日、法統を継承して以来、37年2か月になります。至らぬことが多
  々あった中、今日まで務めることができましたのは、仏祖のご加護は申すまでもなく、宗
  門内外の方々のご支援、ご理解とご協力のお蔭であります。皆様に、心より感謝申し上げ
  ます。
   この間、本願寺では、阿弥陀堂の修復、顕如上人400回忌、蓮如上人500回遠
  忌、御影堂の修復、宗祖親鸞聖人750回大遠忌等のご縁を皆様とともにすることができ
  ました。さらに、北境内地を取得できたお蔭で、活動をより広く展開できるようになりま
  した。また、宗門では基幹運動の推進とともに、さまざまの活動や事業がありました。世
  界各地にも、お念仏の輪が広がっています。それらを、巡教などによって身近に知り、御
  同朋の思いを確かめることができましたこと、まことに有り難く思います。
   この37年間は勝如前門主の戦争を挟んだ激変の50年に比べれば、やや穏やかとも言
  える時代でしたが、国内では大小の天災・人災が相次ぎ、経済価値が優先された結果、心
  の問題も深刻化しました。世界では、武力紛争、経済格差、気候変動、核物質の拡散など、
  深刻なあるいは人類の生存に関わる課題が露わになりました。その中で、心残りは、浄土
  真宗に生きる私たちが十分に力を発揮できたとは言えないことです。
   私たちの宗門は、門信徒一人ひとりに、み教えが受け継がれるという素晴らしい伝統を
  もっています。これからも、社会の変動の中にあって、浄土真宗のみ教えや伝統にある多
  様な可能性を見つけ出し、各人、各世代、それぞれの個性と条件を活かし、特に若い世代
  の感性と実行力を尊重して、一人でも多くの方を朋とし、御同朋の社会をめざして歩むこ
  とができるよう願っております。
   後を継ぎます新門主は、築地本願寺で5年9か月の間、副住職を務めて経験を積み見聞
  を広めています。今後は、法統を護るとともに、宗門全体を思い、広く宗教界を視野に入
  れて、務めることとなります。皆様の一層のご支援をお願いいたします。
   なお、私は、70歳まであと1年余りとなりました。先のことは予測できませんが、阿
  弥陀如来の揺るぎない本願力の中に、宗祖聖人のみ教えを仰ぎ、浄土真宗の僧侶としての
  務めを、できる限り果たしたいと思っております。